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英語学習と、ミステリと、その他もろもろ。

「春画」に見る翻訳の難しさと面白さ

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昨年、東京都文京区の永青文庫で国内初の春画展が開催され、大きな話題になりました。はてなブックマークでも「春画はポルノか芸術か」とか「ゾーニングをどうするか」というような話題が上がっていましたね。来場者数は4ヶ月間で20万人以上と、予想以上の大盛況だったようです。

私も見に行きましたが、こじんまりとした小さな美術館に長蛇の列!芋洗い状態で春画を鑑賞しました。

style.nikkei.com

 

Shunga展@大英博物館

実は、それに先駆けて開催された大英博物館での春画展を、ロンドン滞在中に見ていたんです!たまたまタイミングよく見れてラッキーでした。

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大英博物館はロンドン滞在中に何度も訪れたところ。入場料が無料なので大学院の課題に行き詰まると散歩がてら入っていました。1階のエジプト・エリアが特にお気に入り。

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このアルカイック・スマイルに何度癒されたことか。そういえば「アルカイック・スマイル」って言葉を初めて知ったのは『マスター・キートン』だったな。浦沢先生は今、大変そうですね…

 

そして春画展。学生料金5ポンドを払って中へ入ります。f:id:sarubobox:20161022193634p:plain

夥しい数の春画が展示されていました。永青文庫は幾つかの部屋に分けて春画が展示されていましたが、こちらはものすごく広いフロアにずらりとありとあらゆる春画!圧巻でした。170点もの作品をロンドンに集めたことにも、それが大英博物館に展示されていることにも、とにかく「すごい…」の一言でした。

来場者はインテリっぽい感じの中高年層が多かった印象です。その時の男女比は男性7割・女性3割くらいだった気がしますが、全会期を通すと女性は約6割ほどいたようです。

この"Shunga"展、大英博物館、ロンドン大学の東洋アフリカ研究学院、国際日本文化研究センター(京都市)と立命館大学の4団体が共同プロジェクトとして3年半もの月日をかけて準備したとのこと。それぞれの作品についている解説もとても詳しく興味深いものでした。

なかでも面白かったのが、葛飾北斎の「蛸と海女」(画像はこちら蛸と海女 - Wikipedia)。

 設定もモチーフもクレイジーなんですが、なんといっても絵の周りに日本語で書かれている台詞!(詳しくはウィキペディアをご覧ください。)

 

「蛸と海女」の台詞の絶妙な英訳

展示の解説ではこの台詞部分について、日本語とその英語訳の両方が書かれていたのですがその英訳が面白かったんです。

写真撮影は禁止だったので、購入したカタログから引用します。

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海女の台詞です。             

アアモウくすぐつたくなつて、ぞろぞろとこしにおぼへがなくなつて、きりもさかひもなく、のそのそといきつづけだな。アア、アア

(引用元:蛸と海女 - Wikipedia

 ウィキペディアでは以上で途切れていますが、カタログの写真ではさらに「アア、アア、アア、ウウ、ムフ、ウム、ウウ、いく、いく」と続いているように読めます。

 

そしてこちらが英訳版。

'Ee, moo, I'm becoming ticklish. One after another until I lose track fu, fu, fu, fuu, limits and boundaries are gone. Oo, oo, oo, I've come, anna, aaaaaa, there, here, here, uu, mu, mu, mu, fun, mufu, umu, uuuuu. Good...good!

(引用元:Buckland, R. 2010. Shunga: Erotic art in Japan. The British Museum Press.) 

翻訳した人、さすがプロですね〜。オノマトペは日本語の発音で残して雰囲気を出しておきながら、英語だけ読んでも意味は分かる感じで、絶妙だと思いました。

なんてったって、出だしの「ああ、もう」が"Ee, moo"ですからね。天才か。

なんか面白すぎて、一人でニヤニヤと日本語と英語の対訳を長時間見比べてたら、気付いたら私の周りに他のお客さん(イギリス人)が5,6人くらい集まってきてました。ガランとしたフロアの一角で、「海女と蛸」の台詞を読むためにちょっとした人だかりができていて、なかなかシュールな光景…

以上、春画展で思いがけず日本語と英語の翻訳の難しさと面白さに触れた思い出でした。

 

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